統計力学の方法は、最近では物理学および化学はもちろん、工学の方面でも応用されるようになってきている。本書はそのような現状に応じるために、統計力学の初歩から、一部進んだ応用までを含めて、極めてわかりやすく、しかも均整のとれた内容となっている。 章１から章５までが、簡単な応用を例とした統計力学の初歩の説明に当てられている。説明は懇切ていねいであって、数学的に高度な予備知識を假定しないで非常に要領よくまとめられている。 　程度の高い統計力学の説明についても、量子力学の詳細な知識を必要とせずに与えられているのも大きい特色である。 　章５から章１２までが応用であり、選ばれた題材は、量子気体の理論、化学平衡と反応速度論、不完全気体および液体理論のおよそ３つのグループに分けられ、いずれも基本的な考え方をがっちりと述べてあり、さらに勉強するためのよい序論となっている。 　対称数、遷移状態の理論の簡潔な説明、および局所結合性の統計力学的取り扱いについての章も本書の特色である。 　全般的に見て、教育的配慮のゆきとどいた、しかも個性のある本書は統計力学を勉強される学生、研究者にとって絶好の入門書である。