振動の分野における近年の動向に最も電要な影響を及ぼした要因は、電子計算機革命である。すなわち、信じられない程の速度で定例の計算を行うことが出来るようになったお陰で、有限要素法のような比較的新しい解析法が発展し、また高次のマトリックスを効率よく処理する新しい計算アルゴリズムが開発されたのである。 一方そのゆえに、幾つかの図式解法を含む多くの解法が時代遅れとなってしまった。 　益々複雑化する問題を解く必要性から、その解析の厳密性に対する要求も高まっている。本書の目的は、系の挙動についての物理的な深い洞察を与えることを念頭におきつつ、出来る限り数学的に厳密な解法を用いることによって、上記の仕事を達成することである。本書においては、離散系に対するマトリックス法、連続系を離散化する種々の手法、非線型振動の厳密な定性的および定量的取り扱い、および不規則振動の統計的解析を含む幅広い主題を網羅している。そして、この間口の広さにもかかわらず、その奥行の深さを犠牲にしないように努力してある。電子計算機による計算に適した定式化と解法とについては、特別の重点においてある。 　本書においてはヤード・ポンド系の単位と国際単位系（ＳＩ）の単位との両者を適切に用いてある。